ここでは更年期に多い更年期障害、脂質異常症、骨粗鬆症以外の代表的な6疾患について解説します。
婦人科疾患
子宮がん
子宮がんには『子宮頸がん』と『子宮体がん』の2種類があります。
頸がんは子宮頸部(子宮の入口)に発生するもので、体がんは子宮体部(子宮の奥)に発生するものです。両者は発生場所が異なるだけでなく、組織型も治療法も異なります。頻度は頸がんが多かったのですが、最近は食生活の欧米化に伴い、体がんが増えています。少なくとも一年に一回は、頸がん、体がん両方の検診を受けましょう。頸がんだけの検診では不完全です。
がんの症状は、ただ出血するだけです。少量の出血でも出血があれば必ず診察を受けてください。
卵巣腫瘍
卵巣腫瘍には、良性の腫瘍と悪性の卵巣がんがあります。進行すると下腹部に痛みや膨満感を感じますが、子宮がんと違って初期に症状はありません。早期発見は検診を受けることで唯一可能です。
卵巣がんは予後が悪いといわれていますが、その理由は初期症状がないため、自覚症状が出てから診察を受けても、すでに進行がんとなっていることが多いからです。初期の卵巣がんの発見には経膣超音波診断が有効です。外来で手軽に受けることができ、痛みも伴わず数分で検査は終わります。
経膣超音波で早期に発見された例では、手術による根治が十分期待できます。
乳がん
日本人女性の乳がんは、生活様式の欧米化に伴って増加傾向にあり、30人に1人が乳がんに罹患するといわれています。早期発見のためにまず大切なのが自己検診です。
一月に一回はしっかりと自分で乳房を触り、しこりの有無や乳頭からの異常分泌がないかをチェックしましょう。自己検診の時期は、生理後4~5日がよいとされていますが、常に触って気をつけていることが大事です。
乳がんの検診は、触診だけでは見落としが多くなるため、乳腺超音波検診やマンモグラフィーを行っている医療機関で相談されるのがよろしいです。
子宮筋腫
更年期の月経困難、過多月経とそれに伴う貧血の原因のひとつに子宮筋腫があります。子宮筋腫の症状は、子宮筋腫の育つ場所によって異なります。
子宮内膜に顔を出す形で発育する粘膜下筋腫は、サイズが小さくても症状が強く出ます。それに対して漿膜下筋腫のように、子宮内膜に顔を出さず外側に発育するタイプは症状が軽く、そのため大きく成長するまで気がつかない場合がしばしばあります。
以前は手術療法が主流でしたが、月経を止めることによって筋腫の縮小を促す偽閉経療法が普及してきています。
子宮内膜症
子宮内膜症とは、本来子宮内腔にのみあるべき子宮内膜が、腹膜や卵巣、子宮筋層内など子宮内腔以外の場所に広がり増殖する病気です。
月経周期ごとに広がった子宮内膜組織が増殖、剥離を繰り返し、月経血はその場にたまり生理通、腰痛、下腹痛の原因となります。子宮筋層内で増殖すると子宮が腫脹しサイズが大きくなります。これを子宮腺筋症といいます。
また卵巣に月経血がたまり、卵巣嚢腫となったものをチョコレート嚢腫といいます。手術療法や月経を止める偽閉経療法などで治療します。
子宮脱
子宮は骨盤の支持組織によってつり下げられて、正常な位置に置かれていますが、その支持組織が弛緩すると下がってきて、膣口から脱出する状態になります。この状態が子宮脱です。
子宮の前方には膀胱があり、後方には直腸があって子宮が下がると同時にこれらの臓器も一緒に下がってきます。すなわち、膀胱脱、直腸脱が同時に生じてきます。
手術療法が根治療法ですが、リング・ペッサリーを挿入して子宮の位置を整復する方法があります。リング・ペッサリーの挿入は外来で簡単に行うことができます。